「TUKI」というブランドは2004年にスタートしたズボン(以下パンツと言います)の専業ブランドで、普通のデザインに「エキセントリック」なデザインを加えることで「何このパンツ……なんか変!」となる服好きの心を激しく突き刺すパンツばかり作っているところです。運営しているのは「原田服飾研究所」

このブランドの存在は僕自身つい最近知ったばかりなのですが、今年の4月にどハマりして、先日もよく行くwalls&bridge(南船場)で「すごく妙な」一品を手に入れたので、今日はそれを紹介したいと思います。

それが冒頭のパンツです。「なんだ、普通の黒いパンツじゃないか」と思いましたか?確かにそうかもしれません。

色も特に複雑な黒ではなく、まさに黒そのもの(009ブラック)です。シルエットとしては緩すぎずきつすぎずのテーパード(先細り)デザインで、全体的にはワークっぽいテイストがあります。これだけなら「どこにでもある、普通の黒いパンツ」です。

僕も初めはそう思いました。しかしこのパンツ、変なところが大きく2つあるんです。

ヘンなとこ1:生地がなんかヘン

まずは生地です。いわゆる「ダック」と呼ばれる、太い糸を使って高い密度に織り込んだ平織りの生地で、一般的にはしっかりした厚みと高い耐久性が特徴です。

そのため軍モノやワークウェアに使用されることも多く、身近なところでは体育館のマットとか跳び箱の布部分とかにも使われています。

なので、まさにこのパンツの「ワークテイスト」と合った生地なわけです。

ただ僕にとってダック生地って分厚いぶん硬くて、履き始めはそれが結構痛かったりするし、風をあんまり通さないので単純に暑いというイメージがありました。でもTUKIのこのパンツは違うんです。

このパンツのダック生地には「コーマ糸(し)」という糸が使われていて、そのおかげで肌触りが普通のダック生地よりも滑らかなうえに、不思議と肌にまとわりつかず、意外なほど涼しく感じるんです。

コーマ糸というのは繊維の中に混ざる短い繊維を丁寧に取り除き、均一で長い繊維だけで作られている糸のこと。

普通はカード糸という糸を使っており、一般的なダック生地やTシャツなんかは、こっちを使っているようです。コーマ糸の方が手間がかかるぶん、もちろん高級になります。

普通のダック生地と違うのは、機能面だけではありません。

ざらざらの肌がくすんで見え、ツルツルの肌が光って見えるように、均一な長い繊維で構成されたTUKIのダック生地は、本来のワーク感とは違う、エレガントな光沢を放っているんです。「本当はワークなはずなのに、なんか上品……」これがこのパンツのヘンなとこ1です。

ヘンなとこ2:仕立てがなんかヘン

もう一つのヘンなとこは、「仕立て」です。先ほどから書いているように、このパンツは基本的にワークっぽい商品です。

しかし仕立てだけをみると、もう明らかにドレスパンツとして作っているんです。僕が気づいた部分を一つずつ紹介していきましょう。

まずはこちら。このタイプのポケットは「フラップ(蓋)・ポケット」と呼ばれるもので、基本的にはスーツのパンツに採用されるデザインです。

またポケットの口の部分は「両玉縁」と呼ばれる、布に切り込みを入れて袋布を取り付け、口の両サイドを縁取るように縫う仕立てになっています。

このポケットの作り方が、先日購入した洋裁の本で説明されていましたが、洋裁初心者の僕には何がどうなっているのかわけがわかりませんでした。

とにもかくにも、この仕立ても普通は礼服などのフォーマルなパンツに採用されるものです。

これはサイド部分の縫い目です。デニムとかワークパンツって「ダブルステッチ」とか「トリプルステッチ」とかって言って、縫い目が表側に出ているものが多いと思うんです。

糸がオレンジだったり、黄色だったり、ピンクだったりと、そこにデザインを取り入れて、ファッション性を加えているものもありますよね。

僕はそれはそれで好きなんですが、やっぱり「縫い目が出る」っていうのはそれだけでカジュアル感が出てしまうわけです。このTUKIのパンツの場合だと、ワークっぽさが出てしまう。

なのでこのパンツは縫い目が外側に出ない方法で縫われています。これだけで全体の印象がさらに上品になっています。

お次は横部分にあるポケットです。これはスラントポケットという種類のポケットで、やっぱりスーツのパンツに多く用いられるポケットです。

僕としてはさらにフォーマルというか、ドレッシーな「バーティカルポケット」という、ポケットの存在が目立ちにくい種類のポケットにして欲しかった、という思いもあります。

ただこのスラントポケットは手が突っ込みやすいので、ポケットに手を突っ込んだり引っ掛けたりしがちな僕には使いやすいのも事実です。

こちらはズボンの裾です。切りっぱなしです。もちろんこのまま履いてもいいわけですが、ブランドの意図としては「自分に合った長さに調整して、ぴったりサイズで履いてね」という仕立てだと思います。

こういう形での販売は、イタリアの有名パンツ専業ブランド「PT01」でもやっていて、やはりドレスパンツとかフォーマルなパンツに多いやり方です。

そうかと思ったらこれ、ボタンフライなんです。リーバイスとかのデニムで採用されている、前をボタンで開けるやつですね。

いわゆる「チャック」しか知らない人からするとものすごく面倒そうに見えるし、「トイレの時大変やん!」とか思うかもしれないんですが、こういうしっかりした作りのボタンフライは着脱が下手をするとチャックよりも楽なので、僕は大好きです。

何はともあれ、ここはちゃっかりカジュアルしてるんです。このびっみょーなバランス感覚が、このパンツの醍醐味と言えるでしょう。

すごく、妙

ぱっと見は普通のパンツのように見えるのに、細かいところを見ると「ん?」というところがあるのが、このTUKIのパンツです。

TUKIの商品にはこの手のパンツが多いんですが、基本的にはパッと見てわかるくらい変わったパンツが多いです。

でもこのパンツは「あ!このパンツ変だ!」って気付くまでに結構時間がかかります。パッと見ではわからない。

何かと「ニッチそうなもの」「通ぶれそうなもの」に惹かれるミーハーな僕は、このパンツのそういうところに惹かれたわけです。すごく妙で、すごく良い。

ただ最近は、少しずつこういった服よりも「ヒャッハー!服着るのたのっしー!似合ってない?そんなもんしらーん!」みたいな服の方に興味が湧いてきています。その辺の話も、また別の服でできたらいいなあ。