前回書いた「チャンスを掴みに行くことはできなくても、受け入れるくらいはする」というコンセプトに従った結果として、僕は様々なチャレンジをさせてもらい、少しずつ自分のスキルや自信を強化してきました。ここでは代表的なものをいくつか紹介したいと思います。

2冊の電子書籍

これはライターの仕事に本腰を入れる前の仕事。今となってはなぜ仕事をもらえたのかよくわからないくらい実績のない時期にもらった話なのだけれど、当時の僕に取って「5万字5万円=1文字1円」という単価は、それだけで魅力的でした(今だったら確実に受けないが)。

なので「ぜひやらせてください!」と飛びついたのです。

最終的には支払いでもめたり、最近このクライアントの出版社が倒産したり、経営者が詐欺まがいの商売をしていたことがわかったりと、後味がものすごくいい仕事にはならなかったんですが、それでもこのタイミングでこの仕事を何も考えずに引き受けたのは正解でした。

というのも「電子書籍を自分の名義で2冊出している」という実績は、玉石混交のライターの中で「まともな文章を書ける人間」を探している数多のクライアントたちに対する、非常にわかりやすい指標になってくれたのです。

結果ライターとしての仕事に本腰を入れ始めた時にも、ランサーズで提案をすれば仕事が決まり、なんなら提案をしなくても仕事が舞い込んでくるようになったのでした。

ランサーズオブザイヤー

前年に活躍したランサーを表彰する表彰式「Lancer of the Year」。これを受賞できたのも、チャンスを受け入れる姿勢があったからだと思います。

ある日事務局の方から送られてきたアンケートメールに「へえ、まあ自分みたいなのでは無理だろうけど、駄目元で答えとくか」みたいな感じで返信した結果、候補に残り、最終的には本番にも呼んでいただけたのでした。

しかし当時の僕はまだうつ病の症状をコントロールしきれているとは言いがたく、授賞式当日は本当に過酷でした。

前泊で東京入りしていたにも関わらず、会場のある渋谷駅に着いてから緊張で吐きそうになり、「もう帰ろうかな……きっと行っても恥をかくだけだ」なんて思ったりもしましたし、ランサーズの事務局の方々に素敵な人が多すぎて余計に縮こまったり、他の受賞者の方達に圧倒されて「消えてしまいたい」と思ったりもしました。

でもここで目を背けずに「せっかくこんな自分にいただいたチャンスなんだから」と受け入れたからこそ、翌年のLancer of the Yearでは前年受賞者としてパネルディスカッションにも登壇させてもらったり、2018年にはオンライン講義の「スクー」の講師として声をかけていただいたりしたのだと考えています。

チャンスを受け入れて、そこで全力を尽くせば、ちゃんと次に繋がるんだなあと思った出来事のひとつです。

出版社付きのゴーストライター

これは2017年の話なのですが、SNS経由で僕を見つけてくださった方からDMが飛んできました。話を聞いてみると、なんと浅学な僕でも耳にしたことのある出版社の編集者の方でした。

子会社とのことだったので「本当にそんな会社あんのか?」と勘ぐって調べてみたところ、実在する会社で、僕の本棚にも何冊かその子会社から出た本がありました。

そこで「電子書籍の執筆経験がおありとのことなので、ぜひ弊社の書籍制作に手を貸して欲しい」というお話をいただき、紙媒体への憧れもあった僕は特に何も考えずOKを出しました。

正確には「今手が回らないので、2ヶ月待って欲しい」と言ったのですが、先方がそれを快諾してくれたのです。

これはまさに電子書籍執筆のチャンスを受け入れていたから訪れたチャンスです。しかもこの時ほいほい依頼を受けたのが功を奏したのか、その1ヶ月後に2件目の依頼もいただき、あっという間に2冊のブックライティングの実績ができました。

本の仕事は非常に刺激的で、このときまでほぼウェブだけで仕事をこなしてきた僕からすると「紙はそうやって書くのか」と驚かされるところが多々ありました。この辺りのことはまたブログにしようと思います。

未開拓分野のウェブライティング

ブックライティングの仕事と並行して舞い込んできたチャンスが、不用品回収やスクラップ業およびその周辺の業界を事業領域とする社団法人からの依頼でした。

不用品回収やスクラップ業にそれほどいいイメージを持っていなかった当時の僕は最初こそ悩んだものの、正直ものすごく報酬が良かったのと、「取材などもしてもらいたい」という話があったので、「お金をもらいながら取材の勉強もできそうだな」と考えてこのチャンスを受け入れました。

ただこの時も僕は他案件で忙しく、出版社と同様2ヶ月待っていただけないかと聞いたところ、これも先方が快諾してくれたのです。後日この話をクライアントとしたところ、どうやら「2ヶ月待つ」という判断はクライアントにとってかなり奇跡的な判断だったようです。

というのも指揮権を持っている人が仕事にかなりのスピード感を持って動く人なので、普通であれば2ヶ月待つなんてありえないのだそうです。しかしなぜかこの時は待つことにしてくれたそうで、本当にラッキーだったなあと思います。

このクライアントとはかなり良好な関係が築け、後述するまた別のチャンスをいただけることになります。

ベテランライターへの弟子入り

僕はこれまで文章講座らしきものに参加したことはありません。下敷きとなっているのは大学時代に呼んだ大量かつ雑多な読書の経験と、小学校の作文や中学時代のポエムに端を発する、もはや癖と言ってもいいほどの作文経験です。

僕はそこに文章術系の本から学んだ内容を加えて、文章力の基礎をなんとか形成しています。そのため、ライターとしては最低限のスキルしかないと思っています。

現在のウェブライティング界隈というのは「ウェブには強いけど、文章の細かいところはよくわからない」というクライアントが大半で、細かい部分の指導をクライアントにしてもらえるという機会は稀です。

そのためライター側は「読みやすい文章とはどんなものか」「面白い内容にするにはどうしたらいいか」を人気のウェブ記事などを読み漁って模索する必要があります。

これがけっこう大変です。クライアントも自分も「正解」を持っていないので、正解のようなものを見つけたと思っていても、それが間違っている可能性もあります。そのため、この暗中模索がひと段落することはありません。「これが正解か?それともこれか?」という作業を延々続けることになります。

そんなときに出版社の編集者という文章のプロとの仕事が舞い込んだわけですが、そこからさらなる文章のプロとの出会いにつながったのが今年2018年の夏の終わりでした。

担当の編集者から「鈴木さん、弟子入りする気ありませんか?」という電話がかかってきて「へ?」と事態を飲み込めないでいると、彼女がこう説明してくれたのです。

「今うちでツートップで書いてくれているライターのうちの1人がいるんですが、その方が『もう53歳にもなるし、そろそろ後継を育てることもしていきたい』とおっしゃっていて『誰かいい人いない?』って言われたんですよ。そこで私、真っ先に鈴木さんの顔が浮かんだので「います!」って即答しちゃって。……どうですかね?」

ものすごく嬉しい話ではあったのですが、僕にはいくつかの懸念点がありました。

1.初めて会う人怖いなあ。

2.今までひとりきりで書いてきたので、うまくコミュニケーションが取れるか不安。苦手なタイプの人だったらどうしよう。紙媒体のライターって怖い人多いイメージだし。

3.他にも大切なクライアントがいるから、弟子入りしたことで他の仕事に手が回らなくなったらどうしよう。

これらを素直に編集者に話したところ、彼女はあまりにも唐突に今までとは違う毛色のチャンスが舞い込んできて尻込みする僕の背中を、次のような言葉で後押ししてくれました。

「大丈夫ですよ、ものすごく物腰が柔らかい方なので。それに鈴木さんと同じで筋トレをずっとされているそうですよ。以前はベンチプレスを100kg挙げていたんですって!」

この話を聞いた僕は「筋トレしてるのか……筋トレしている人には変な人が多いが、悪い人はいないからな」というよくわからない筋トレへの信頼から、このチャンスも受け入れることにしたのです。

まだ実際に弟子としての仕事が入ったわけではないのですが、一度連絡をとってお会いしたところ、話の通りの物腰柔らかな方で、僕の質問ぜめにも快く答えてくださり、たくさんの示唆をいただけたのでした。そしてやはり、ジャケットの腕も胸もぱつぱつでした。

これからこのお師匠と仕事をするのがたのしみでなりません。

企業や専門家への取材・ライター育成へ

これと並行して次のステップに進んだのが、前述した社団法人との関係です。取引を始めてから1年、僕はずっとあくまでライターとして取材・執筆をしてきました。これは言ってみれば職人的ポジションで、クライアントからの発注にしたがって文章を作っていく仕事です。

しかし先日この1年の僕の働きを評価してくれたクライアントが、「少し大変かもしれないけど、うちに大幅に時間を割いてもらって、全国の企業や専門家への取材とか、ライター育成・チーム形成もやってみませんか」という話をくれたのです。

詳しい契約内容は書きませんが、要は「鈴木さんのリソースを僕たちの事業に投資しませんか」という話でした。

僕は正直なところ、投資とか事業とか、経営とか、その界隈のことはよくわかりません。それに今まで組織に一切属さずにやってきた僕にとって、あくまでフリーの立場とはいえ、リソースの大半を一つのクライアントに注ぐというやり方に切り替えるというのは、リスクを感じる話でもありました。

なので、最初は「考えさせてください」と話を保留にしました。しかし僕は結局、日を空けずにこの話を受けることにしたのです。その理由は以下の3つです。

1.1年間一緒に仕事をしてきて、クライアントとの仕事がめちゃくちゃ楽しかったから。メンバーが超のつく変人ぞろいで、仕事の話以外でも楽しい。

2.クライアントの舵取りをしている人たちにビジネスのセンスがあると感じたから。僕はそんなにビジネスに詳しくないけれど、4年間で数百冊のビジネス書を読んできた経験だけで言えば、ものすごくキレる人たちに思える。

3.確実にライターとしてのステップアップにつながるから。取材ができるかどうかは、ウェブライターの淘汰がされた後にも生き残れるかどうかの鍵になるし、自分と同じレベルのライターを育成できればさらに生き残れる可能性は高くなる。

どの業界でもたいていの場合プレイヤーよりマネージャーの方が高給取りである。

弟子入りにしろ、この仕事にしろ、今までとは性質の違う仕事が大幅に増えることが予想されます。でもそうやって新しい経験ができるということは、それだけ経験値が増えて新しいスキルが身につくということ。無駄は何一つなく、得るものしかない選択ができたと思っています。


今回はここまで。最後となる【その3】では、こうした体験の中から学んだ「ハズレ」のチャンスを掴まないためのポイントや、このコンセプトで僕が成長できた理由について書きます。