mittan「カディシャツ」のナチュラルさについて

今日紹介しようと考えているのは、先日「シンプルなのに、狂ってるカバン」で紹介したmittanというブランドの代表的な作品である「カディシャツ」というシャツについてです。

このシャツは一見するといかにも「ナチュラルなシャツ」です。

例えば名前にもあるように「カディ」という生地が使われていますが、この生地はインドのある村で生産されている手紡ぎ手織りの非常にアナログな綿生地です。

糸の太さが微妙に違うので、見た目の表情が豊かになる。

手紡ぎなので糸が太くなっているところがあちこちにあり、生地にナチュラルな雰囲気を与えているんです。

また手織りなので、機械織りよりも生地の目が緩くなっており、着ているときに軽さと柔らかさが感じられます。通気性もよく、walls&bridgeのマスターからは「夏にも着られる長袖」という説明を受けました。

僕はむちゃくちゃ暑がりなので、この「夏にも着られる長袖」という説明に関しては正直「本当に?僕でも夏に着られるの?」と半信半疑でした。

しかし先日のクソ暑い日にこのシャツを着て出かけたところ、本当に「全然いける」と思ったのです。むしろ長袖が日光を遮ってくれて、身体的には楽に感じたくらいです。

植物の染料で染められている点や、洗濯をするごとにふんわり柔らかくなっていくあたりも、このシャツの「ナチュラル」たるゆえんでしょう。

ただ、僕はこのシャツを「ナチュラルでありながら、同時にパンクなシャツ」だと感じています。以下ではその理由を生地と縫製に注目して解説したいと思います。

「カディ」という反骨的な生地

「反骨(≒パンク」」とは、容易に人にくみしない強い心、権勢に抵抗する強い心という意味を持つ言葉です。この意味で、カディほど反骨的な生地はないかもしれません。

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「スワデシ(国産品)の無いスワラジ(独立)は、生命の無いただの屍に過ぎない」という言葉を遺しているのは、インド独立の父マハトマ・ガンジーです。

そしてこのガンジーが、1921年に「自分たちが纏う衣服のための糸を自らの手で紡ごう」と言って、インドの人々に奨励したのが手紡ぎ手織りのカディでした。

世界の問題の多くが暴力で解決されようとしていた当時、その真逆の「非暴力・不服従」という姿勢を堅持したガンジーは、まさに反骨の人だったと言えます。

そんなガンジーが支配国であったイギリスの工業製品に対抗するべくインドに広めたのがカディだったのです。これだけでも、カディがパンクな生地であると言えると思います。

しかし1970年代後半以降に広まったパンク・ファッションの流れと合わせて考えると、この生地のパンク性がさらに明確になります。

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パンク・ファッションが生まれたのは、1970年代のイギリスです。中東戦争に伴うオイルショックなどの影響で不況下にあったイギリスは、インフレに失業率の上昇、生活水準の低下と典型的かつ深刻な問題を抱えていました。こうなると国全体に「怒り」が溜まり始めます。

当時のイギリスではその矛先が人種差別に向かうこともありましたが、権力や既存の価値観に向かう場合もありました。

後者がファッションや音楽を通じて形になったのが、パンク・ファッションやパンク・ミュージックだったと言えます。

「仕立ての良い服」「新品の既製服」「高価な宝石」こそが正しく、美しいとされていた時代に、パンクは「自分で作った服(DIY)」「古着」「イミテーション」といった真逆の価値観を突きつけていきます。

ヴィヴィアン・ウエストウッドらが作った「アナーキーシャツ」はその象徴的なアイテムで、白地のシャツに太い縦縞の染色を施し、アナーキストの顔を貼り付けたり、反政府的な文言を書き殴ったりして、いわば既製服を真っ向からレイプしていました。

確かにガンジーの「非暴力」というコンセプトからすれば、1970年代後半のパンク・ファッションは暴力的すぎます。

しかしパンク・ファッションの持つ反体制性や破壊性は、ガンジーやガンジーが広めたカディにも見られる要素です。「既製服を否定し、DIYで服を作る」あたりは、完全にカディの精神と言えるでしょう。

このことからも、カディがパンクな生地であるということができるのではないでしょうか。

mittanの「補強」が生み出すパンキッシュな雰囲気

次にカディシャツの縫製、特に補強におけるパンク性を考えてみましょう。

襟の補強ステッチ。

カディシャツに施されている補強は、あくまで補強であって、デザインではありません。なぜなら補強が施されている襟やカフス、裾などの部位は、全てデザイナーの三谷さんが補強なしのカディシャツを着潰したうえで「ここは補強が必要だ」と考えた部位だからです。

襟の後ろ側の補強。「絶対ここからスレさせたりとかしねえから。絶対にだ」という信念が縫い込まれている。

しかもカディシャツの補強は、デザイン的なステッチにありがちな飾り気が全くありません。「絶対ここから破れたりスレたりさせねえからなあ!」という意志が感じられる力強い補強です。

そのため工業製品や既製服といった言葉よりは、ハンドメイドやDIY、あるいは少数民族の日常着という言葉の方がしっくりきます。

カフス部分の補強。幅の狭いカフスなのに、めちゃくちゃ主張してくる。

買って、飽きて、売ったり捨てたりするのが現代消費社会の「常識」です。

しかしカディシャツからは、そうした常識に抗おうとする「壊れさせないし、壊れても直して使う(mittanは自社製品の有償修理も請け負う)」という気概が感じられます。これをパンク≒反骨と言わずしてなんと言いましょうか。

裾の補強。トリプルステッチとかなんてもんじゃない。

mittanはカディシャツに限らず、優しい柔らかい雰囲気の服をたくさん作っているブランドです。デザイナーの三谷さんも物腰の柔らかい、メガネの似合う知的な方です。

しかしその柔らかい雰囲気や知的なメガネの奥には、確信犯的な「パンク」の精神がギラギラと光っているのだと、僕は感じています。僕はmittanの服に袖を通すたびにそんなことを考えては、ゾクッとしています。

だからカディシャツは「パンクな服」と合わせたい

僕はmittanのカディシャツをこんなふうに考えているので、できればこの服はナチュラル系の服ではなく、「パンクな服」と合わせたいなと考えてしまいます。

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例えばPHINGERIN(フィンガリン)というブランドの「ZIP RUN JACKET」という、ボンテージパンツのディティールを取り入れたパンキッシュなアウターを羽織ったり、同ブランドのボンテージパンツを合わせてみたいです。ボッロボロに敗れたデニムなんかも良さそうです。

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あるいはBRU NA BOINNE(ブルーナボイン )が最近リリースしたブレスレット「B.W.B」は有刺鉄線をモチーフにした尖りまくったデザインなので、イメージにぴったりです。

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同ブランドが17SSにリリースした「ファッキングWARコート」は、ハンドペイントを戦争の象徴である迷彩柄の上に施すことで「反戦」を表現した一着ですが、これもカディシャツと相性が良いのではないかと考えています。

mittanにはこういった面白い服がたくさんあります。もっともっと知っていきたいし、紹介したいブランドです。


……とこんな記事を書いていた折、最近仲良くしていただいているあるお店の販売員の方からこんな本を借してもらいました。

「PUNK」というタイトルと、おびただしい量の刺繍糸。キレイだけど、ギラつてる。

沖潤子というアーティストの『PUNK』という作品集です。今回は「タイトルを見て思わず膝を打った」とだけ書いておきたいと思います。

というのも沖潤子という人は販売員の方曰く「狂ってる」アーティストであり、彼女の分野が刺し子糸を使って刺しに刺しまくる刺繍だからです。そして本のタイトルが「PUNK」。

あまりにも、あまりにも今回自分がmittanのカディシャツについて書いた文章と一致したので、脳内のアドレナリンがドッパドッパでました。テンション上がる。

家に持って帰って数ページめくった時点で「自分が目指している生き方・在り方の極北が、ここにある…!」と思うほど感銘を受けたので、詳細はまた文章にしようと思っています。

今晩読むのが楽しみだなあ!!よっしゃあ筋トレするぞぉ……!