大学卒業間際の12月、僕はとある小説を書き始めた。当時どっぷりと入り浸っていた「西田アパート」という集まりを主題とした青春小説『岸田アパート物語』だ。ワードで150枚弱の中編小説で、バカみたいに恋したり、バカみたいに酒飲んで暴れたり、小難しいことを考えて色々なものをこじらせたり、そんな「THE大学生」をふんだんに盛り込んだ物語だった。

人生で初めて書き上げた小説だったから、記念にと幻冬舎の雑誌『papyrus』の「パピルス新人賞」に応募した。今調べたら僕は応募した2011年が最後の応募だったようだ。そしてその結果は「最終選考候補作」だった。当時神奈川の川崎で荒みきった毎日を送っていた僕にとって、飛び上がるほど嬉しい出来事だったものだ。

実際『岸田アパート物語』の評判は上々で、周囲からも面白いと言ってもらえた。自分でも正直面白いと思っていた。しかし先日あることがきっかけで読み直してみると、「おいおい、なんじゃこら……。よくこれで最終候補に残ったなあ」と思うほど文章がひどい。

主述関係もむちゃくちゃだし、日本語もおかしい。誤脱も多いし、第一表現が「小難しい」のではなくて「ズレている」。物語のつじつまもそこかしこで矛盾している。

村上春樹は『騎士団長殺し』の原稿を出版社に渡すまでに、5度書き直したという。僕は『岸田アパート物語』を一度として書き直したことがない。そりゃこんな文章のままだわなあと合点が行く。

「自分史上最高の文章」と思っていた文章が、憂鬱になるくらいの悪文駄文だと気づけたのも、この3年間延々と仕事で文章を書き続けてきた成果かもしれない。

そう思った僕はいまになってぼつぼつと『岸田アパート物語』の手直しを始めている。完成はいつになるはわからないが、完成したらブログに公開しちゃおうかなあと思う。その時はどうぞ読んでやってください。