先日、表紙に描かれている『グラップラー刃牙』のビスケット・オリバと、中二病臭のすごいタイトルに惹かれて、『プリズナー・トレーニング』という本を購入した。

内容は、かつてアメリカの監獄で囚人たちに「コーチ」とまで呼ばれた男が、長年の服役生活で構築した自重トレーニングメソッドを開陳するというものだ。

ここ3年ほど毎週3冊程度の様々な本を買ってきた経験からして、この手の本はたいてい中身がなく、「そんな改まって言うほどのことじゃねえだろ」という話を、理屈をこねくり回して書いているだけという場合がほとんどだ。そして得てしてそういう本は1200〜1300円くらいのお手頃価格で提供される。

しかしこの本は税抜きで2000円もする。これは「騙されたと思っても大目に見てね」という価格ではなく、「騙されたと思って買ってくれ。後悔はさせない」という価格だ。簡単な内容のレビューだけを見てその覚悟を悟った僕は、発売から2日後にはAmazonでポチッといった。

中身は期待通りだった。文体こそ中二病臭たっぷりだし、多少のツッコミどころもあるものの、内容は極めて堅実。

・高重量のウェイトトレーニングは関節を痛め、将来的な肉体の弱体化につながる。

・自重トレーニングはやり方さえ工夫すれば自分の肉体にとってかなりの高負荷をかけられるばかりか、根本的な身体能力を引き上げる。

・自重トレーニングとはいえやり方次第では怪我につながるし、継続しにくくなる。慎重に軽い負荷かから鍛えはじめ、徐々に負荷を上げていくべきだ。

このように想像以上に真面目な自重トレーニング本で、しかもそのステップが写真と文章で非常にわかりやすく解説されている。そして何より、その堅実な文体で説明された先にある、自重トレーニングがかっこよすぎる。

例えば主に肩のトレーニングとなる「ハンドスタンドプッシュアップ」シリーズの最終ステップであるステップ10は、片手で逆立ちした状態で体を上下させる「ワンアーム・ハンドスタンドプッシュアップ」だ。

片手逆立ち腕立て伏せ……ゲームや漫画でしかありえないと思っていた荒技に、もしかすると自分でも手が届く?そう考えるとワクワクしすぎて眠れないほどだ。実際この本を読んだ夜は、早く本の内容を試したくて眠れなかった。

この本を読んでいない人からすると「そんなところまでいけるはずがない」と言いたくなるだろう。しかしこの本をじっくり読んでみれば「時間をかけて努力さえすれば、きっとそこまで到達できる」という確信さえ抱くことができる。それくらい、この本は真面目だ。

ただインパクトを得るためだけに「ワンアーム・ハンドスタンドプッシュアップ」の項目を設けたのではないことが、誠実な読者にはわかるのだ。

僕はこれまで3年ほど、ウェイトトレーニングに重きを置いてきた。理由は自重トレーニングよりも見た目が派手なので自分の気分を盛り上げやすいということと、体型を効率的に変化させるにはウェイトトレーニングの方が秀でているということだった。しかし最近、以下の理由でウェイトトレーニングへのモチベーションが下がりつつあった。

・これ以上筋肉が大きくなると、かなりお金をかけている好きな服が着られなくなる。実際何着かの服はすでに肩がパツンパツンで着られない。

・100kg以上の重量を扱う時の精神的なプレッシャーが辛い。一歩間違えれば事故につながるし、怪我のリスクも大きい。特に限界に近い重量を扱う時になると、意図的に精神を高ぶらせ、なかばブチギレ状態で挑まないと重さに負けてしまう。普段ぼんやりしている僕にはこれがかなりキツい作業になる。

僕は別にパワーリフティングの大会やボディビルの大会を目指しているわけではなく、純粋に筋トレが好きだから筋トレをしている。であれば、楽しいと思えるトレーニングを積極的に取り入れていくべきだろう。結果、僕は本の中で紹介されている6種のトレーニングを高重量種目と入れ替える形で、今のウェイトトレーニングのメニューの中に組み込むことにした。

まだ両手で逆立ちして腕立て伏せをするところまでも行っていないし、なんなら最終ステップが片手腕立て伏せになる「プッシュアップ」シリーズのうちの通常の腕立て伏せ(フルプッシュアップ)にも到達していない。

しかし僕は毎回この自重トレーニングプログラムに挑戦するのが楽しみで仕方がない。なぜならそれは、片手で腕立て伏せをしたり、片手で懸垂をしたり、片手で逆立ちをして腕立て伏せをしたりする未来の自分への、1本道だからだ。

やることは決まっている。なりたい姿も見えている。ならやるしかない。

こういう人たちみたいに体を自在に動かせるようになったら、さぞかし楽しいだろうなあ……。

追記 これくらいのモチベーションで仕事ができれば、もっとお金持ちになれるのになあ……。