こんにちは。フリーライターの鈴木直人と言います。
「歯科の勉強をしてみたい」と思ったライターが、歯や口に関することを、勉強も兼ねて書き連ねていく企画「D-semi」(企画の詳細は文末に)。
1本目は、知ってるようで知らない人が多い「歯周病」が、けっこうヤバい病気なんだよという話、の第1弾です。
歯周病の症状には、歯茎の腫れ・痛み、出血、歯茎の後退やいわゆる「歯周ポケット」の拡大など、いろいろあるんですが、今回は特に「うわ、ヤバ」ってなる症状を3つピックアップして紹介したいと思います。
知らないで放っておくとけっこうヤバい病気なんで、割とマジで知っておくことをおすすめします。
「ドブ」みてえな口の臭い
歯周病が進行すると、口からドブみてえな臭いがします。息してもドブ、喋ってもドブ。どんなにイケメンでも、高い服を着てても、美容に気を遣ってても、口臭がドブ。
歯周病の口臭には他にもいろいろな表現があります。
- 腐った食べ物・生ごみみたいな臭い
- 腐った卵のような臭い
- 金属臭
- カビ臭い
- 古くなった魚みたいな臭い
- アンモニア臭
- 化学薬品のような臭い
まあ、いずれにしろ、嗅いでいて気分の良い臭いじゃありません。
臭いの原因の一つは、歯周病菌です。
歯周病菌は歯と歯茎の間の「歯周ポケット」の中に生息し、揮発性硫黄化合物(VSC)というガスを発生させます。このガスには硫化水素、メチルメルカプタンといった物質が含まれますが、これが歯周病による口臭の原因になるんです。
要は口の中に住んでる菌のオナラが口から漂ってるってことです。考えるだけで、けっこう最悪な話ですよね。
しかも口臭って、なかなか自分ではわからないんですよ。デリケートな話題なんで、周りも思ってても言えないし。結果、歯周病に気付けないままどんどん病気が進行して、どんどん口臭もキツくなっていく。ヤバくないですか?
ある日、歯が抜け落ちる
歯周病が進行すると、歯が抜け始めます。
歯茎が腫れたり、出血したりするところからスタートして、膿が出たり、歯がグラグラし始めたり、硬いものを食べると痛みを感じたりするようになり、ある日ポロッと歯が抜けます。
人間の骨って、肌のターンオーバーとかと一緒で、常に生まれ変わっています。骨を作る骨芽細胞と、骨を破壊する破骨細胞がいい感じのバランスで仕事することで、新しい骨と古い骨が入れ替わっています。
でも歯周病になるとこのバランスが崩れて、破骨細胞がめっちゃ元気になるんです。そりゃもう、当たり前に骨が減っていきますよね。結果、歯の土台の骨が溶けちゃって、ポロッといくわけです。
しかも何がヤバいって、1本抜けたらそれで終わりじゃないとこです。歯周病って、口の中で広がるんですよ。例えば奥歯が歯周病で抜けるじゃないですか。そしたらその横の歯にも歯周病菌が広がって、そっちの歯もヤっちまう。
歯の本数が減ると、それだけ1本あたりにかかる負担も大きくなるんで、残った歯が傷んだり、折れたり、割れたり、みたいなリスクも上がります。だから歯並びとか、噛み合わせとかがめちゃくちゃになっちゃうことも少なくない。
歯がないと、ご飯も食べにくいし、言葉もしゃべりにくくなります。人によったら、口を開けて笑うのが嫌になる、ってこともあります。そう、歯がないと、人生まあまあ楽しくないんですよ。
【一番ヤバい】痛みとかないうちに、けっこう症状が進行しちゃう
歯周病の症状の中で、一番ヤバいの何だろうなって考えると、やっぱり「重症化するまで痛みとかの自覚症状がほとんどない」ってとこだなあと思います。
こういう病気を「サイレントディジーズ」とか「サイレントキラー」って呼びます。日本語だと「静かなる病」「静かなる殺し屋」。無駄にカッコいい。『BLEACH』かよ。
他だと糖尿病とか高血圧みたいな、生活習慣病も同じように呼ばれます。
歯周病は細菌が歯周ポケットの中で炎症を起こす病気です。炎症=痛いものって思う人も多いんじゃないでしょうか。実際足首を捻挫した時とかの痛み、あれも炎症です。だからロキソニンテープ=経皮吸収型鎮痛・抗炎症薬を貼ると痛みが和らぐわけです。
じゃあ、歯周病も痛いんちゃうんかいという話です。ただちょっと歯周病は事情が違うらしい。
というのも、体内で炎症が起きた時の痛みは、そこに体液が集まって神経を圧迫するから生じるもの。でも歯周病は歯周ポケットの傷口から絶えず体液が垂れ流しになってるので、神経が圧迫されません。だから痛くないんです。
加えて、歯周病菌の親玉P.g菌(Porphyromonas gingivalis)が作る”ジンジパイン”というタンパク質分解酵素は、神経に備わっている痛みを感じる器官(レセプター)を破壊します。
「痛みを感じない」ってちょっと強キャラ感ありますけど、この手のキャラはたいてい心臓とか破壊されて致命傷を負い、「あ…れ…?」とか言って倒れます。歯周病の場合は歯が抜ける。ヤバい。
まとめ
「じゃあどうすればいいの?」って思った人。歯医者、行きましょう。ちゃんとした歯医者に。
①「俺は歯磨きちゃんとしてるから大丈夫」
②「俺、2ヶ月に1回くらい、歯医者行ってるよ」
って言う人もいるかもしれん。うんうん、わかるわかる。でも、それはいいから、「ちゃんとした歯医者」に行きましょう。特に①の人。歯磨きしてんのは偉い。でも−−−また詳しく説明するから−−−とにかく歯医者行こう。
歯周病の治療の多くは、基本的に自分だけではどうにもなりません。今回紹介したような症状にかかるのが嫌な人は、できるだけ早い段階に信頼できる歯科医院で、検査・治療を受けることをおすすめします。
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※【D-semi】について
ライターを名乗り始めて10年。そのうち5年くらい、とある歯科医院に継続してお仕事をもらっています。
僕はもともと歯について全く知らない人間だったんですが、この5年でずいぶん歯に詳しくなり、その中で「歯科おもしれ〜」って思うようになりました。
そこで、この自前のブログ『ひとり部活動記録』の企画として、<D-semi>なるものを始めようということに。D-semi=Dental seminarの略称です、安直です。歯や口に関することも、勉強も兼ねて徒然なるままに書きつけていこうというものです。
あくまでこういう企画なので、掲載している内容は「ふーん、そんなこともあるのね」程度に聞いてください。もちろんちゃんと調べてはいるけれど、素人なので!
興味が湧いた人はぜひ自分で調べたり、信頼できる歯医者さんに聞いたりしてみてください。