朝4時。昨夜突然の呼び出しで終電まで飲んでいたのでまだ酒が残っている。最近めっぽう酒が弱くなった。自分の口の酒臭いのに閉口しながら、ゆで卵2つとしゃけ飯をかきこむ。5時前に家を出た。

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まだ眠る玉出の町を駅まで1分。今日は初めてのテント泊だ。何日も前から荷物を準備し、2日くらい前から楽しみで仕方なく、そわそわし通しだった。

荷物は水や食料、暗闇の中で飲むビールなんかを含めて総重量15キロ。さすがに重い。でもその重みすら心地良いのが登山の不思議なところだと思う。

西梅田ー大阪ー京都を経由し、湖西線に乗り換えて滋賀県比良駅へ向かう。道中車窓から見える橙色の朝焼け、京都の山々が美しい。この数日晴れ渡る空を見るたびにウズウズしていた気持ちが報われる。

今日は山だ!

低山が多いせいか、大阪では登山の格好をしている人にあまり出くわさない。なので僕は電車で登山者らしい人を見るとそれだけで嬉しくなる。

「山、いいですよね」と言いたくなってしまう。

今日は、山だ!

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7時11分、スタート地点の比良駅に到着。いつも思うが電車から登山口近くの駅に降り立った瞬間に鼻腔を刺激するこの緑の匂いの美味しさったらない。

体の底からワクワクが込み上げる。しかしスタートして1時間くらいすると荷物の重みで肩が痛み始めた。多分リュックがうまく背負えていないせいだろう。

何度か背面長を調整したら、嘘のように荷物が軽くなった。確かにいつもよりは重いけれど、それでもほんとにどこへでもいける気がした。

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往路の最初の山場、ガレ場・青ガレ。確かに険しくはあったけれど、そんなに言うほどかなあという感じ。急坂を登ると琵琶湖と日本アルプスが背後に見えた。本当にきれいだ。

空は雲ひとつない快晴。嬉しくって鼻歌が出る。

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青ガレを超えたところにある金糞峠で昼食。やっぱり山はラーメンがうまい。

一番初めの食事は「マルちゃん製麺」。下で食べてもうまいのだから、山で食べるとぶったまげるほど美味いのである。

本来であればここから谷へ降りて渓谷を歩く予定だったが、天気がすこぶる良いので琵琶湖側を歩けるルートをとることにした。一路、北比良峠へ。

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この2つの峠を結ぶルートは比良山系の縦走路になっている。北へと進めば右手に青々とした琵琶湖、そしてシーズン最後かと思われる真っ赤に色付いた紅葉が見える。

枯れても美しい葉を見ていると、人としてもこうありたいと思う。

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そんなことを考えているうちに北比良峠へ到着。この北比良峠は、平地部の広さもさることながら、展望が素晴らしい。

この時間になると琵琶湖の対岸まで見渡せるようになっていた。ここから見る夜景もきっと美しいだろう。

荷物の重さも込みで時間計算をしていたが、ほとんど標準タイム(「山と渓谷地図」)で歩けているのでこの時点でタイムにかなり余裕があった。

そこで再度予定を変更し、少し回り道しながらこの絶景を堪能することにした。すれ違う人たちとも「最高の天気ですね!」と言い合った。

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そうこうしているうちに今日の宿、八雲が原に到着。

思っていたよりも開けていて、これなら星空も満喫できそう。手頃な場所を見つけ、テント設営に入る。

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初めての野外での設営だったが、風がなかったのですんなり立てられた。中に入ると自然と笑みがこぼれる。なにこれ楽しすぎワロタァ。

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荷物を整理し、午後からの武奈ヶ岳に備える。大幅に予定より早く着いたので、少し本を読んでから30分ほど眠った。

なにこれ快適すぎワロタァ。

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武奈ヶ岳への道のりは、木漏れ日と紅葉がきれいな谷をずっと上がっていくものだった。明神平を稜線の山とするなら、武奈ヶ岳のこのコースは谷の山と言えるかもしれない。

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頂上から見た真っ赤な山々と琵琶湖周辺の平野、そして対岸の山々が織りなす風景は、素晴らしかった。

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武奈ヶ岳から戻ってくると、僕以外に2張のテントが!今夜は貸切プラネタリウムを期待していたのに、ちょっと残念……。

少し休憩すると晩御飯の支度にとりかかる。今日の晩御飯は豪勢で、カップうどんのほかに、缶詰のうずら卵と焼き鳥、そしてアルトバイエルン、さらにサッポロ黒ラベルだぁー!

とりあえずお湯を沸かしてうどんを作る。沸かしている間にうずら卵をうどんの器に入れてしまう。

そしてうどんができるまでの間に缶詰の焼き鳥をあたためて食べられないかと思い、直火で熱を加えてみる。しかし一瞬で底が熱くなるのでなかなか全体が温まらない上に、ゴトクのサイズがギリギリすぎてすぐ落ちそうになる。

そこで思いついたのが湯せん。

少量の水を入れた鍋に蓋を開けた缶詰を入れ蓋に重しをして火にかける!

これでちゃんと温かい焼き鳥が食べられたのだった。

美味すぎる晩御飯が終わる頃にはあたりは真っ暗闇。とりあえず寝る準備を済ませ、満天の星空に備えるとしよう……。

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防寒着をすべて着込み、おりたたみ座布団1枚を手にテントを出た。おもむろに地面に寝転がると手足を大の字に広げる。満天の星空。10分おきに流れ星が空を横切る。

なにも考えず、ひたすら星空を見ていると、少しずつ自分があちらに移っていくような気がした。

テント場から歩いて20分のところに夜景スポットでもあり、かつ対岸のアルプスから上る朝日を見ることができる場所がある。

明日はまだ日の明けない頃から歩き出し、夜景と朝日をまとめてみようと思う。

なので今日は早く眠ろう。きっと、想像を超える美しい景色に出会えると信じて。

深夜2時。ふと目がさめる。もともと枕や布団が変わると眠れないタイプなのでどうしても爆睡というわけにはいかない。

多分これがどうにかなるまでは長期縦走は危険だろう。静まり返った外の世界は完全に山のターン、という感じがする。

明神平とは違って蹄の獣が走って行ったりはしないけれど、テントの布1枚向こうは圧倒的に山が強いという感じ。

テントに守られている。

まっ暗闇というのは夜目が利かない動物にとっては本当に恐ろしい。

きっとこれに怯えて人間はあかりを発明したのだろう。その明かりが度を越した19世紀末から、多分人類は自然と決定的に敵対し始めたのではないだろうか。

それだけの力が、明かりにはある。

シベルブシュの本を思い出した。

続く